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やまぶきいろ

電車に乗ったら、乗車している人たちの多くがいやにうなだれてみえて、車内が暗く感じた。

 

渋谷で降りてみあげた空の月は妙な形をしていて、気づけば周囲の人たちの多くがスマートフォンを掲げている。知らなかったが皆既月食の最中だった。

 

ぐったりした人が多く重苦しかった電車の空気も、喰われてゆく月の作用がもたらしていたものなのではないか、そんなふうにおもうと、その通りであるような気がしてきた。

 

映画『やまぶき』をみて、上映後は山崎樹一郎監督と脚本家の渡辺あやさんのトーク渡辺あやさんという脚本家は、デビュー作が映画『ジョゼと虎と魚たち』の脚本だというのだから、華々しい。ちょうど今、ドラマ『エルピス』(関テレだったかな)が放送中で話題だ。

 

 

二人のトークは、期待以上の内容だった。

アイデンティティの幻想にかかわる話をききながら、20世紀半ばにあらゆるジャンルの作家たちによって試行錯誤された表象の問題は、完全に捨て去られたわけでも、完全にリセットされたわけでもないのだと感じられた。なんだか励まされるようなきもちになった。

 

主演の祷キララをどこでみたのか、印象はつよいのに、すぐにはおもいだせなかった。

昨年、配信で見た『夏の砂の上』(玉田企画)の主演をつとめた俳優さんだった。

名字はいのりと読むらしい。

映画『やまぶき』のなかで、彼女が川瀬陽太さん演じる父親に「それは祈りだ」といわれるような台詞があったとおもう。

 

やまぶきいろ、という黄色とは異なる色彩を示す長い言葉が、子どものころ、不思議におもえた。「やまぶき」と「きいろ」がくっついているのがおもしろかった。フランス語ならば音をつなぐ、リエゾン liaison だ。たぶん、小学校に入る前の記憶だ。私は記憶力がヘンによいところがある。それなのに、外国語も日本語も、単語はちっとも覚えられないのだからざんねんだ。

 

 

帰途、最寄駅前で、懐かしい人をみかけた気がしたけれど、わからなかった。

 

今日もこんな感じ。

メモと思ったら今日も更新できた。