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にわのすなばにおとずれる

黒川幸則監督の新作『にわのすなば』をポレポレ東中野でみた。

しばらくみずにとっておきたいような気がしたけれどやっぱりみてきた。

 

 

この監督の映画に水面が映るとどうしてだろう、かならず、ああこの世界には、あちらの世界からこっそりと だれかがおとずれて、ふうっと、ほらそこにいる、そんなふうに感じる。

 

 

見終わって映画館を出るも、『にわのすなば』のあとだ。まっすぐすたすた歩くことができなくなる。かたさ、やわらかさ、つめたさ、あつさ、音の共鳴、からだで感じる映画。

 

以下、メモとはいっても、ネタバレになるかもしれない。

 

 

 

映画『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(2016)がとつぜん人間がどすんと落ちて転がるという忘れがたい強烈なイメージをなげこんできたから、またなにかが落っこちてころがるんじゃないかとおもっていたら、いかにもドスンと落ちて転がるようなおもわせぶりな土管はなぜかぶらさがっているだけで(ぶらさがってみえただけだったのかな)、落ちてこなかった。落ちてくるのはふとんだった。余計にのびたお餅みたいに、ずるずるタレて鈍くかぶさってくる。

 

 

もちろんタレるふとんに『春原さんのうた』(杉田協士監督、2021)の奇妙な書道がタレさがるイメージを思い出しもした。そのとき、やっぱり、だれかが映画におとずれる。

 

 

 

おとずれる

訪れる 

音ずれる

 

 

 

土管。なんどくぐってもおなじ場所にしかでないけれど、そこはいつも不思議な「にわのすなば」だ。

 

 

庭の土管だからどうしてもドラえもんを思い出してしまう。

 

 

こうやって、しばらく感想があたまのなかを駆けめぐるのだろう。

 

 

 

かなり作りこまれているのではないだろうか。ひとつひとつの要素が映画のありかたそのものにつながっていく。つまり、かなりスマートな映画でもある。

 

 

 

 

奇妙な不穏がこの映画を豊かにしていて、映画のさいごの数分は、じつは心がもわもわとした。

 

 

 

 

 

 

黒川監督は、にわのすなばを、映画を、みせてくれた。

 

西山真来さんのかつやくもうれしい。

 

 

 

 

もわもわしたくせに、元気がでちゃった。