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神経質なのに大雑把な妖精

ジェーン・バーキンのことを(ここに)書いてから(というか話題にしてからすぐあとに)、『ジェーンとシャルロット』(2021)を見に行った。『シャルロットによるジェーン』というのが原題で、シャルロット・ゲーンズブールの監督作品。ホームムービーのようでもあるのだけれど、見終わって時間がたつと、あれこれ思いだされて、何か重要なことがそこにはあるような気がしてくる。そんなわけで、見てよかった。

 

映画を見て、ジェーン・バーキンのあまりたくましいとはいえない考え方や性格にちょっと自分と似ているところがあるような気がした。

 

 

 

『ナック』(1965)もバーキンの出演作だった、ととおい記憶が蘇っても、アントニオーニ(Blowup)とは違って、この映画のなかのバーキンの記憶はまったくない。この映画をみて、「うわー、ものすごくつまんない映画をみちゃった!」と思ったことはよく覚えている。なにかとお洒落そうなイメージをみるとすこし疑っておく癖がついたのは、この映画のせいだろう(ジャケットがものすごくお洒落にみえたのだ)。ところで今ネットで検索してみて知った、『ナック』の音楽が十代のジェーンが結婚した相手のジョン・バリーなのだった。

 

 

* * *

 

ジャック・ロジエ監督の特集がはじまって、『アデュー・フィリピーヌ』(1961)をそれとセットの上映だったブリジッド・バルドーやゴダールの登場する短編ドキュメンタリー二本(『パパラッツィ』『バルドー/ゴダール』ともに1963)と一緒にみて、つづいて『メーヌ・オセアン』(1985)で大興奮するに至った。そして、ようやく三つ目のプログラム『トルテュ島の遭難者たち』(1974)を見に行くこともできた。

 

ところで、『トルテュ島の遭難者たち』を見ているあいだ、ちょっとした不運というか、前の座席の男性がなんだか態度が怖くて、ちょっと気詰まりになり、せっかくの貴重なロジエなのに気が散ってしまった。

 

何があったかというと、私の足が一度だけ、はずみで前の背もたれにこつんとぶつかってしまったのだ。派手に蹴ってしまったわけではないが、これがいけなかった。前の座席の男性が、瞬時にいかにも不愉快そうな叫び声をあげて迷惑がったのだ。上映後、その男性は、ただちに立ちあがった。通路側の席だったので、出口へ向かうときその男性は私の席の真横をとおることになる。苛立たしげな雰囲気。出来事からおそらく100分くらいは経っていた。146分の映画。立ちあがって急ぐように出口へと段を上ろうとする不機嫌なこの男性、まだ座っている私の横をとおるそのタイミングで、なんと、手に持っているビニール傘の先端を座席側に斜めに勢いよくさし込んだのだ。ひえっ。傘の先端は、幸か不幸かリュックにグサリ、そしてすぐに男性もろとも消えた。

 

たいしたことではないようだけれど、まあ物騒だと思った。その男性は「せっかくの貴重なロジエなのに、気が散ってしまった」と思ったのだろうか。

 

さすがは「みんなのロジエ」、いろんな人が見に来るね。