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  ぱ か ぱ 〜 じ ゅ 📖

パワフルな妖精

 

2023年度の前期が終わってふり返ると、あたらしかったのは、携帯扇風機学生の登場だった。……でも、そういえば、まずは少人数の語学クラスで1名登場して、「あ、授業中の扇風機は初登場だなあ」といってしまったからか、次からは使わなくなっていたし、つづいて大人数の講義科目ですぐ見える席で扇風機を机に設置している学生が目に入ったときには、「ほんと暑いですよね、扇風機、いいなあ、こっちに向けてほしいくらいですよ〜」といってしまったからか、やっぱりその後は見かけなくなった。もっとも、大きな授業はうしろの方はもう全然見えないからわからないけれど。

 

それにしても、何でも思ったことをしゃべってしまうヘンな教師である。

 

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数年前に、もう劣等感を人にわざわざ晒したりするのはやめると自分に誓ったのに、さいきんまた劣等感がこみあげることが多いのか、誓いを破ってしまっている。この夏、ここで、ふたたび誓いを新たにする。

 

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ジェーン・バーキンまで逝ってしまった。

私にとって馴染みなのは、リヴェットのバーキンかもしれない。リヴェットの作品のなかだと、『美しき諍い女』(1991)のバーキンがすきだ。

若い時のバーキンは、あまりしらない。アントニオーニの『Blowup』(1967)くらいじゃないかな。

 

ゴダールの『右側に気をつけろ』は、バーキンに注目したことはなかったけれどすきな作品だったから何度かみているはずなのに、すっかり忘れてしまった。……リールを抱えて車の窓に身体ごと突っ込んでいるゴダールのイメージしか浮かばない(そんなシーンはないのかも知れない)。

 

さいきんだと、ホン・サンスの『ヘウォンの恋愛日記』(2013)のバーキンがちょっと登場する場面は、一度しかみていなくても忘れられないおかしな場面。とてもすきな場面。……というか、『ヘウォン……』はおもいだそうとしてもその場面しかおもいだせない。

 

 

3月11日の震災の直後に、バーキンはシャトレ劇場でチャリティー・コンサートを開催した。パリにいてただネットのニュースを眺めてはうろたえていただけの私は、コンサートに行くことにした。私がバーキンをじっさいに目にしたのはこの時限り。

バーキンの呼びかけに応じた著名人たちのなかにはシャルル・アズナヴールもいた。思いだすのは、ステージの上で、ピョンピョン跳ねて飾らない、ニコニコ笑っているバーキンのことで、眺めるうちに、こんな人が存在しうるのかと、呆気にとられるような感覚があった。けっきょく、コンサート中ただただ驚きつづけていた。バーキンの様子、その存在感が驚きだったのだ。以来、バーキンをおもうときにはかならず敬意が伴う。独特の敬意だ。その敬意は、とても遠いはずのバーキンを、すごく近くに感じさせる。

眼を閉じてバーキンを想うと、とび跳ねながらかすれた高い声でなにかを歌っている姿が浮かぶ。バーキンは、パワフルな妖精だ。